かおす。

揺りかごに降る雨。
誰かのために子守唄。
もういいかい。
まぁだだよ。
迎えに来て。
迷子だょ。
見つかったらおしまい?

痛みから花が咲いたよ。もうずいぶん前のこと。お世辞にも美しいとは言えない歪な花。周りに咲く春の花々の引き立て役にさえなれない。腕から血の管から栄養を取って、醜さを露呈してゆく。毒々しく舞い散る花弁は蜜のよう。一時の安息のために、花は次々と裂いてゆく。種はいつだって尽きない。生きていくほどに汚されてゆく脳を、誰か止めて。愛した人の記憶さえ奪ってゆく憂鬱を、誰か、止めて。止まらない時間を、広がる世界の闇を。明けない夜はここが光も届かない深遠であるから。温かい雨も、雪になって舞い降りる。止めて、止めて。凍り付いて目覚めたくない。氷の棺で、そのまま。死体が好きな王子様、私を食べちゃって。私を摂理の鎖に縛り付けないで。

天使が静かに降ってきた。
白い刃をまとって。
赤が映える穢れのない出で立ちで。
静かに、目を閉じた。