消えない声。

感情を司るのは心なんて言えたらとても素敵だけれど、脳でしかないと最近感じ始めている。
胸が痛いって比喩。
私はどこより、頭が痛い。
割れそう。
耳鳴り。
閃光。
私の心は脳の養分になってしまったの?
それにしても働き出さない脳。
呼吸さえ困難で、金魚のように陸では酸素さえ探せない。
窒素。
窒素。
二酸化炭素。
二酸化炭素。
窒素。
吸える空気なんてありはしない。
私は水中でこそ自由であり、活動できる。
捕まえられない。
キミには無理。
単細胞で、短絡的で、動物的なキミには。
狩る事ばかりのその武器では。
どうせなら、沈んでしまいたい。
生きているのか、死んでいるのか、動いているのか、止まっているのか。
ぎりぎりの、浮遊感の中。
光の届かない、柔らかな闇の中。
誰もいない。
遠くで。
緩い頭でそのうち、水に溶けてゆくような。
初めから何も無い。
あるとすれば、食物連鎖。
誰かの明日の為に、昨日を生きたとしてもいい。
初めから何も無ければ、終わりも無い。
意識の無い、誰かの為の命でいい。
微かな呼吸を奪う、窒息してゆく感情でいい。
誰にも愛されなくても、呼吸が途絶えて脳が哀しまなければ。
わたしは、どこにもいない。

そこにあるのは、空へ向かう、眼に見えない命。
辿々しい歩みで、波に漂うような。
けれど浮かぶ、空。
淡い光に揺られて、時を逆行。
海から空。
地から空。
循環は止まらない。
連鎖は続いて。
終わらない空と、始まらない海。
帰れない命と。
行き先を知らない、種。
どこまでも、いつまでも。

終わらない、見つからない。

還りたいのに、還れない。
温かかった、絶対安全の揺り籠。
小さな手のひらで。
抱きしめたかったのは、その命。
もう戻らない。