夢幻の人 - 7 –
翌日、俊樹は平熱に戻った。普段通り遅刻すれすれで登校した彼は、昨日大人しくしていた分力がありあまっている様子の水那に飛びつかれる。 「俊樹! 調子は? もういいの?」 矢継ぎ早に聞かれたことに一つの頷きで答えた俊樹は水那をぶら下げたまま自分の席まで歩き始めた。 「元気になってよかったー、今度から具合が悪くなったらまずあたしに云ってよね」 「……はよ、友也」 水那の無茶苦茶な言葉を綺麗に流して、俊樹は常識人の友也に助けを求める。 窓から見える空は今日も五月晴れだった。 今まで通りの生活を送っているつもりだが、ふとした瞬間に瑞貴のことが過っては、追い払うために頭を振る。何かを考えていなくては思考の空白に瑞貴が入ってきてしまうのだ。 今までも、頭の片隅にはいつも瑞貴がいた。しかし、昨日会ってからはその片隅から中心までを占拠されてしまい、俊樹は瑞貴のことしか考えられなくなっていた。