水の夢 – 起 –

水の夢 – prologue –

さびしがりの月のうさぎさん。
月が満ちるたび野兎とお話しするのを
楽しみにしていました。
ある日、野兎は思いました。
どうすれば
月のうさぎさんと
ずっといられるでしょう?
お日さまを、
食べてしまおうか?
そうしたら
みんな木の実が食べられなくて
おなかが空いてしまう。
野兎はたくさん考えました。
でもいい考えはうかばず、
月のうさぎさんに相談しました。

 

——ねえ、君にはわかりますか。
誰かにとっては純粋で、無垢な願いであったとして。
誰かにとっては残酷で、無慈悲な願いであったことが。
彼らは『月』を、忌み嫌うようになるでしょう。
大切なものを奪った、仇として。