水の夢 – prologue –
さびしがりの月のうさぎさん。 月が満ちるたび野兎とお話しするのを 楽しみにしていました。 ある日、野兎は思いました。 どうすれば 月のうさぎさんと ずっといられるでしょう? お日さまを、 食べてしまおうか? そうしたら みんな木の実が食べられなくて おなかが空いてしまう。 野兎はたくさん考えました。 でもいい考えはうかばず、 月のうさぎさんに相談しました。 ——ねえ、君にはわかりますか。 誰かにとっては純粋で、無垢な願いであったとして。 誰かにとっては残酷で、無慈悲な願いであったことが。 彼らは『月』を、忌み嫌うようになるでしょう。 大切なものを奪った、仇として。