(卵を吐き出さないまま、君の遺伝子を留めて置きたい。)
それ、てどう云う意味?
(君から摘出した、君の遺伝子の欠片が、私の子宮に欲しい。)
毎月、繰り返すの?
(大丈夫。君の遺伝子はずっとあたしと一緒に生きるの。)
それは無理でしょ。胎児にならないまま、腐ってしまう。
(だから、願望。)
*
(だって、聞いて欲しいの。彼奴等は意味も無く数千の生命をちり紙に包んで捨ててしまうの。)
そう云う身体構造って云うだけで仕方が無いんだよ。
(あたしはそんな事しない。君だと思って大切にする。)
そう云う身体構造じゃないんだよ。例え胎児になったとしよう。其れでも十月十日であなたの身体から産まれるの。
(ううん、ずっと一緒よ。)
*
(君の可愛い卵が欲しい。)
とてもじゃないけど無理だよ。排卵日は判るけど、何時何分まで細かい事は知らないから。
(君の遺伝子が、欲しい。)
どうしてそんなに拘るの? 私は此処に居るんだよ?
(欲しい。欲しい。あたしの卵と君の卵。双子みたいで可愛いでしょう)
…………。
(君の遺伝子が着床すれば良いのに。)
*
(あたし判ったの。君の卵が欲しいのは嘘じゃないけれど、)
…………。
(あたし、君の子宮に入りたい。君から産まれたい。)
……無理。内臓破裂する。
(くすくす、今じゃないよ。あたしだって馬鹿じゃないから。)
……どうだか。
(綺麗な君の中で育って、君から産まれる。そしたら、あたしきっと普通になれるの。)
*
(あたし最初から間違ってたの。だからやり直すの。君の子宮から。)
……今からでも、遅くないんじゃない?
(君の遺伝子を持っていなくても、ちゃんと君の子宮に還って来れるかなあ?)
聞いてるの?
(独りで死んじゃうのは淋しかったから、君とは無理でも一部と一緒に死にたかったな。)
…………。
(じゃあ、またね。あたしのお母さん。)
「……カルテ番号00392781。意識混濁の後、心肺停止。なお、その原因は一切不明」
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