いぬの日SS

 11月1日は犬の日らしい。
 それに影響してかイヌ族のペットたちへの派遣依頼が多く寄せられたらしく、本部内は慌ただしい様子だった。
 自分の身に性別が変わるという災難真っ只中の比留間は事務処理など裏方の作業をしながら、犬の日と聞いて真っ先に恋人の村井のことを思い出していた。


*


「景虎、お座り」
「っはい!?」

 一緒に食事を摂り、入浴も済ませ、あとは寝るだけと一緒にベッドに入ったところだった。
 悲しいことに比留間によく躾られた村井は驚きながらも、きちんと正座をしてベッドの上に座っていた。

「お手」
「え、え……?」

 疑問符を大量に浮かべながらも差し出された比留間の手に自分の手を重ねる村井。

「お利口さん」

 重ねられた手を引っ張ると自然と比留間を押し倒しているような体勢になり、村井は頬を赤らめた。

「イイ子にはご褒美やらないとな」

 ちゅと唇を重ねると村井の体温が高く感じられた。
 舌先を伸ばして村井の唇を舐めるとくすぐったさからかすぐに薄く開き、滑り込ませるとやはり熱い。
 お互いざらざらな舌を触れ合わせると心地好くて、飽くことなく舌を絡ませていると村井の眼の色が変わっていくのを感じる。

「……待て」

 胸元に伸びてきた村井の手の甲を軽く抓って、静かにそれだけを云うと彼はしゅんと眉を下げて悲しみを全力で伝えてくる。
 ああ、やっぱりこいつ犬みたいでかわいい。

「なーんて、冗談だよ」

 にやりと笑って村井の手を解放し、また口づけを求めて首に両手を回した。