どうして、いつもこうなるのだろう。
村井と出掛けると、大体反省文を提出する羽目になる。
学習しない自分も、どうしようもない。
その日、村井景虎と比留間ミケはデートのようなことをしていた。
理由は女性化したことにより、外出できないことに我慢ならなくなった比留間が「外に出たい」と真の飼い主である神頭瑞清に直談判しに行ったのだ。
それに対する答えが、『お目付役を伴う』ことだった。
最初は親しい猫又翡翠を選んだのだが、恋人である村井は犬猿の仲である彼と一緒に外出させることを良しとしなかった。
村井が瑞清に自分が行く、と立候補した際「変なことするなよ」と難色の表情を浮かべながらも了承を得られたのだ。
それは比留間がオスだった時にも番犬業務の後にニホン連邦でおイタした前科持ちだからである。
「大丈夫!」と自信満々に答えた村井を信頼したのかしていないのかは定かではないが、晴れて比留間の外出は認められた。
マスクで顔を隠し、目立つ桃色の前髪もカラートリートメントで飴色に染めて。凹凸が目立つ身体も村井の服を拝借して隠して。
比留間は久々の外出を楽しんでいた。
まるで、デートみたいだ。村井は胸を弾ませてあちらこちらと興味があるものにふらふら引き寄せられる比留間を追いかけていた。
「あー……やっぱメスの服ってねえよな」
「え? 欲しいんすか?」
「いやー、さすがに毎日ノーブラノーパンで過ごすのは嫌だわ」
「えっ!?」
知らなかったわけではない。しかし、改めて云われると意識してしまうものなのだ。
つまり、今だって。比留間は涼しい顔をしているが、下着を身につけずに歩いているということで。
村井の中で、何かがぶっつりと音を立てて切れた。
「まあ、今日はいいや。あと酒でも、っおい!?」
比留間にとっては本当に些細な発言だった。
それにも関わらず村井にむんずと腕を掴まれてずるずると人気のない路地裏に引きずり込まれて、比留間は自分の失言に気づいた。
「か、景虎くん……? ちょーっと落ち着こうか?」
猫撫で声で比留間は村井をどうどうと窘めようとする。
せっかく外に出られて、その一回目でやらかしたとなったら、次はない。
「ほ、ほら、あそこ行こうぜ? 景虎が好きな激安の殿堂……!」
「ミケさん!」
「んっ、ちょ、っと……ん、んぅ……」
がぶりと唇に噛みつかれるとただでさえ力では敵わないというのに、抵抗する意思すら奪われる。
好みの相手の唾液ほど、理性をとろかせるものなんてない。
こくこくと飲み込んでいると頭が惚けてきてしまう。
「はっ……、わか、った……口で、口でするから……な?」
何とかぎりぎり頭を働かせて反省文提出を免れようと策を捻り出した。
それにも関わらず村井は何も云わずに項に齧り付く。
「あ……っ、や、やだ……だめ……そ、こ噛んじゃ……」
項を噛まれると、メスとして孕ませたいと求められているのだと、嫌という程に意識させられる。
腹が子種を求めて切なく鳴く。ぶるぶると脚が萎えてきて、座り込んでしまいそうになるところを村井に腰を掴まれた。
脚が地につかない浮遊感に余計に頭が働かなくなる。
「やっ、ちょ……っ! 下ろしてっ!」
「大丈夫っすよ、離しませんから」
そのまま片腕で簡単に腰を抱えながら性急にぶかぶかのズボンをずり下された。
壁に比留間の背中を押し付けるのは憚られたのか、身体を反転させられて眼の前に壁が迫る。
「やあぁっ……う、うぅ……」
またがぶりと鬱血してしまいそうなほど強く噛まれて、頭がくらりとした。
ぐちゅぐちゅと音を立てて硬くなったそれを押し付けられるとはくはくと入り口が動いてしまうのがわかる。
じんじんと熱を持って、腫れ上がって。擦り上げられたくてとくとくと涎が溢れてくる。
「あうぅ……だめ……、だめ、なのに……」
心許なさに壁を引っ掻いて、痛みを感じても。それでも気は紛れずにぬるぬると自分がだらしなく吐き出す粘液で陰茎を濡らす村井の手助けをするように腰を揺らしてしまう。
「はふ……い、挿れられちゃう……ぱんつ、履いてないから即はめ、されちゃう……♡」
「……っ!?」
村井の動きがぴたりと止まる。しかしその逸物は質量を増して比留間が放った一言が効いているのは明白だった。
「やだぁ……♡ それ以上おっきくしたら、入らないよぉ……♡」
「……やべぇ、ミケさんのエロスイッチ入ったっ!?」
村井は慌てた様子で比留間の口に指を含ませる。
「むうぅ……ひゃやく……おひんひんいれへぇ……っ♡」
「こ、声抑えてくださいね……?」
村井がムラムラしていたはずなのになぜかハラハラさせられる羽目になっているが、こうなってはもうどうしようもない。
「んんっ……! んっ、ひゃあひゅごいっ♡ ひょくひゃめだからおひんひんおっひくふぁんひるうぅ……っ♡」
「ミケさんしーっ!しーっすよ!」
「ひゃらぁ……♡ むいぃ……おひんひんきもひぃの♡」
最初比留間が云った通りに口でして貰えば良かったと村井は遅い後悔をする。
村井だって反省文は書きたくない。こっそりとする分には良心が一ミリも痛まないといえば嘘になるが、許されると思ったのだ。
「奥ぅ、奥とんとんしてぇ……♡ おなか、じんじんするのぉ……っ♡」
意図的に浅いところでひっそりと抜き差しをしていたのだが、どうやら見逃してくれる気がないらしい。
しかしやってもやらなくても乱痴気騒ぎならもうやってしまった方がいいだろうと奥までぐっと腰を突き入れる。
「んんんん……っ♡ ひゅごいっきもひいぃ……っ♡ あかひゃんれきひゃうぅ……っ♡」
「うわあああああ!!」
もうどうにかして早く終わらせないと本当にまずい。もうこうして時々見せられる比留間の痴態に興奮するとかそういうことを考えられる次元ではない。
とにかく早くイって比留間を落ち着かせるために申し訳ないと思いながら手のひらで口許を覆い、がつがつと乱暴に腰を使う。
「んんんんんっ♡ んっ、んんんんん♡」
お願いだからこんな状況でそんな興奮しないでくれと村井は良心を破茶滅茶に痛めながら、それでも悲しい哉、下半身は素直に反応してどくどくと白濁を噴き出すのだった。
「ん〜っ♡ ん、んんーっ、ふっ、ひっひゃううぅっ♡」
中に出されてびくんびくんと身体を仰け反らせて絶頂に達した比留間は村井の簡易的な口枷から逃れてあられもない声を響かせて、慌てた村井は改めて完全に口を塞いだ。
もう完全に手遅れだとわかっていながら。
しかしそれが呼吸が不規則な比留間にとっては窒息プレイに似た状態になっていたようで、また身体をびくびくと痙攣させて大量の潮を撒き散らしながら明後日の方向に飛んでしまった。
「わっ、うわわあああ! ミケさんごめんなさい! 息、息してますか!?」
「はっ、はっ……はー……♡ まさか景虎にこんらことされると思わらくてぇ♡ 興奮した……♡」
もうだめだ。絶対正気に戻ったらぶん殴られる。
今でこそ頭がいい感じにぼやけているようで上機嫌に喉を鳴らしながら擦り寄ってきている比留間だが、絶対にこれは後から怒られると決して短くない付き合いの中で村井は学習していた。
せめて比留間の記憶がそのまま曖昧なまま過ぎて欲しい。すやすやと眠り出した身体を抱えて辺りの様子を窺いながら路地裏から出たところを待ち構えていた警備のペットに捕縛された。
後に村井は反省文提出と設楽うさぎの躾送り。比留間は反省文提出と寮内すら外出禁止令が出た。
その日のうちに、比留間が密林でぱんつをポチったのは云うまでもない。
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