ラビットパニック!

‎ 幼児退行の試験薬を飲んでメスの身体になってしまった比留間のために、研究員のペットたちは日々、彼(彼女?)を元に戻すための研究をしていました。
その成果がついに形になり、恐る恐る渡された小瓶の液体を口に含んだ比留間でしたが……。
「……元に戻ってねえじゃねえか」
‎ それどころか、頭にぴょこんとウサギの耳が生えてしまいました。
‎ さらに状況が悪化したように見えますが、周りの反応はどういったものなのでしょうか……。
‎ 彼らの様子を覗いてみましょう。

☩ ☩ ☩

諏訪ミケの場合。

「それは……」
「あ……その……」
‎ 諏訪中将の眼線はやはり、比留間の頭部に生えたウサギの耳に向かいます。
‎ ますますおかしなことになってしまったことが恥ずかしくて、まさに穴があったら入りたい心地に比留間は俯きました。
「……可愛らしいな」
「えっ」
‎ 思いがけない諏訪中将の言葉に先ほどまでの不安はどこへやら、比留間の胸は弾みます。
「撫でてもいいか?」
「どっ、どうぞ……!」
‎ 嬉しい言葉にすかさず撫でてほしい、と背伸びをしてしまい恥ずかしくなります。ですが、諏訪中将の手が優しく耳の付け根に触れると丸い尻尾が震えてしまうくらい幸せで、全身がとろけてしまいそうです。
「ん、んん……」
‎ 付け根から先っぽまで丹念に、愛情を込めて撫でられると気持ち良さに頭がふわふわしてきて、少しだけ大胆な気持ちになってしまいます。
「もっと……いっぱい撫でてください……」
‎ 諏訪中将の立派な胸板に頬を擦り寄せて、好ましい彼の匂いで胸をいっぱいにしながらそう、おねだりをしてしまいました。
「ああ、いいだろう」
‎ 諏訪中将のゴッドハンド撫で撫でにすっかり蕩かされてしまった比留間の身体をお姫様抱っこして、壊れものを扱うように大事にベッドに身体を横たえさせました。
‎ そしていつもとは少し違う、甘い夜を過ごしたのでした。

☩‎ ☩‎ ☩

獅子ミケの場合。

「なに、誘ってるの?」
「そんな訳ないでしょ……」
‎ 獅子崎の目が頭部に向かい、そして尻尾がある臀部に向かうと比留間は咄嗟にシャツを引っ張って隠そうとします。
「どうして隠すの、見せてよ」
「やだ、尚さん絶対触る気でしょ」
「触られたら、困ることでもあるの?」
「うっ……」
‎ 獅子崎の含みのある笑顔とその物言いに、比留間は言葉を詰まらせます。
普段の姿でも尻尾の付け根をマッサージされると堪らなく、イケない気持ちになってしまうというのに今はウサギの姿です。
‎ つまり……、それはいつも以上にソウイウ欲求が強く現れてしまう可能性がある、ということです。
‎ その証拠に獅子崎が尻尾に触れる……その場面を想像するだけで胸がきゅんと切なく疼き、期待に耳が、尻尾がぴくぴくと震えてしまうのを抑えることができません。
「ちょ、ちょっとだけ……だから、な……」
「……そんなに嫌なら無理強いはしないよ?」
「……っ!」
‎ 覚悟を決めたのに手のひらを返されてしまえば、最初は抵抗があったはずなのにそれさえ忘れて、獅子崎に触れられることを渇望してしまいます。
「ゃ……、じゃない、から……触って……」
「尻尾だけでいいの?」
‎ いつもよりよく聞こえるウサギの耳を食まれながら意地悪な言葉を吹き込まれても、羞恥心や変なプライドが甘く崩されてしまうだけです。
「ん、ん……ぜん、ぶ……触って……」
‎ 必死に隠していたはずの丸いふわふわな尻尾をシャツをめくって自ら曝け出し、はしたなくおねだりしてしまうのでした。

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景ミケの場合。

「え!?‎ ミケさん、どうしたんっすか!?」
「それなー、俺も知りたいんだわ」
‎ 番犬業務から帰ってきた村井はどことなく疲れた様子でしたが、比留間の頭に生えたウサギの耳を見るときらきらと瞳が輝きました。
「わ、なんかもふもふ度が増してるっすね……」
「……んだよ、触りてぇの?」
‎ メスの身体になった時を思い出すやり取りに比留間は微かに苦笑します。
「いやっ!?‎ そ、そんなことないっすよ!?‎ 触り心地よさそうだなとか思ってないっすよ!?」
「……触り心地なら千里の方がいいんじゃねえ?」
‎ そう云いながら自分のものではないような耳を触ると、食い入るような視線が村井から送られてきて思わず吹き出してしまいます。
「正直に云ってみ?‎ 別に触るくらい減るもんでもねえし」
「いっいいんっすか?‎ はい!‎ 触りたいっす!!」
‎ 手を挙げて鼻息荒く答える村井に「はいはい」と頭を差し出すと、恐る恐るといった様子で触れてくる彼の指がくすぐったく感じて、思わず耳がぴくぴくと動いてしまいます。
「んっ……くすぐってぇ……」
「すっ、すんません……!‎ こうっすか……?」
「あ、ばっ……、急に付け根触んな、って……」
‎ 先っぽから付け根の方へ撫で下ろされるとくすぐったさとは違う、ぞくぞくとする震えが襲ってきて、不満を伝えるための声が甘くなってしまいました。
「み、ミケさん……!」
「やっ、やだぁ……っ、噛むな……っ」
‎ 興奮した様子でがぶがぶと耳を噛まれても痛みよりも気持ち良さの方が上回って、村井の顔を押し退けようと伸ばした手も、もっととねだるように後頭部に回してしまいます。
‎ そうすると番犬業務帰りの村井の汗の匂いが強く感じられて、誘われるように首筋をぺろぺろと舐めてしまいます。
「うっ、み、ミケさん……俺汗臭いっすよ……?」
‎ 咄嗟に距離を取ろうと村井は比留間の肩を押しましたが、負けじとぐいぐいと鼻先を押しつけて首元に顔を埋めます。
「ん……、知ってる……だから風呂入る前に一回……」
‎ 比留間がすっかり発情していることに村井が気づいた時には既に手遅れで……もふもふさせてもらう側ではなく、ウサギに食べられるトラという、あべこべな状態になってしまったのでした。

☩ ☩ ☩

玉ミケ玉の場合。

「わー、ミケ今度はウサギになったんだね」
「……相変わらず玉響は驚かねえのな」
‎ ある意味予想通りの愛猫の反応に比留間は乾いた笑いを零しつつ、じわじわと迫ってくる彼に危機感を覚えて気づかれないように、ゆっくり距離を取ります。
「ねえ、知ってる?‎ ウサギってえっちした刺激で」
「そのネタはもういいから!‎ もう十分わかったから!」
‎ 以前とんでもない目に遭ったことを比留間は忘れていません。それだけに愛猫の瞳が妖しく光っているのを見ると、自分は完全に捕食される側の動物なのだと思い知らされて、ここにはいない猫又翡翠に助けを求めたくなります。
「ふふ、大丈夫だよ?‎ ウサギの子と遊んでもらったことあるし、任せて?」
「い、いや、いい!‎ 本当にいいから!」
‎ 普段は自分よりも小さく華奢な愛猫でも、今の比留間にとっては立派なオスです。固く縮こまってしまっている比留間の身体を愛猫は優しく抱きしめて、ぺたりと寝ている耳をぺろぺろと毛づくろいをするように舐めます。
「ミケも、気持ちいこと……好きでしょ?」
‎ そう云いながら背中から腰を撫でて、丸いふわふわな尻尾を撫でられると何とも云えない心地にさせられて、反論の言葉が出てきません。
「ふふ、いっぱい可愛がってあげるね」
‎ だめだ、流されてはいけないと頭の片隅で思うものの、尻尾の付け根を揉まれると抵抗するのが無駄な行為に思えてきてしまいます。
‎ 唇を求められて、触れ合って、咥内を丹念に舐められていると徐々に思考を手放して、与えられる快楽に溺れていくのでした。