「っ……ぁふ♡」
業務を終えて自室へ戻ってきた獅子崎の耳に甘やかな声が届く。
またこの期間が来たのか。聴力に優れた獣耳は扉越しの声でも鮮明に拾ってしまう。きっと通りかかった他のペットも、いるのならば隣室の卯月も耳を塞ぎたい状態だったのではないであろうか。
これは生理現象である。どうしようもない、ただ彼、いや、今は彼女と呼ぶべきなのだけれど。そんなこと、今はどうでもいい。
また特殊性癖全開の、倒錯的な行為に耽ることになるのである。
このまま時が過ぎるのを待つのも周りの迷惑になる。
意を決して扉を開くと脳髄を揺さぶられるような甘やかな雌の匂い。
発している本人は獅子崎に気づく気配もなく、ひとり遊びに興じているようだ。
「ぁ……あん、あ……うう……っ♡」
華奢な指を三本も咥えながらももどかしげに腰を揺らすのは普段咥えこんでいるのが獅子崎の逞しいものだからであろう。
「……ミケ」
「んあ……尚しゃ……、尚しゃん……♡」
名前を呼ばれてようやく獅子崎の存在に気づいた様子の比留間はまったく己の現状を恥じる様子もなく、媚びるように名前を呼ぶ。
「尚さん……お疲れさまぁ……♡ 尚さん専用オナホ♡ すぐ使えるよ♡」
のろのろと身体を起こして獅子崎が好んでいる後背位の体勢を取る比留間。
何度獅子崎のものを受け入れてもその入り口は可憐なもので小さな口をはくはくと、早く食べさせてほしいと云わんばかりに忙しなく涎を溢れさせている。
「……オナホは勝手に喋らないし動かないよね?」
背中に覆い被さって手探りで口の中に指を押し込むとそれだけでひくんと背中がしなる。やることはやる。ただあまり大声をあげられても近所迷惑になりかねないので口を塞ぐ必要がある。
特に云っていないのに指に舌を絡めて口淫の真似事をしながら立派な毛並みの尻尾と丸い尻を震わせる。
まったくどうしようもない。
そもそも獅子崎には女性、メスを乱暴に扱う趣味はないというのに始まりがいけなかったのか。比留間は発情期が来てしまうと手酷く抱かれることに興奮を見出すようになってしまった。
獅子崎にもその責任はあるものの、毎月こうなるのは正直きついものがある。
最初に手酷くしてしまった分、甘やかして、大切にしてやりたいというのに。
帰宅して早々だが、自分の番いは着替える猶予すら与えてくれそうにない。
簡単に前を寛げてまだ完全に勃起していないもののそこそこ硬度を上げた陰茎を宛がってやるだけで「あぅ……♡」と期待に満ちた声を上げる。
そのまま望むように一気に奥まで無遠慮に侵入するとはふはふ、とネコのくせに犬のように息を荒らげながら背中をしならせた。きゅうきゅうと喜びを伝えるように媚肉は絡みついて心地好い刺激を与えてくる。
「はうぅ……っ♡ ひもひぃ♡ らおひゃんの、おっひぃのっひゅひいぃ♡」
ぎゅうぎゅうと味わうように淫らな粘膜はべったりと絡みついて離れない。それに逆らって挿入を浅くして膨らんだ箇所をごりごりと先端で抉るように刺激するときゃんきゃんとまさに子犬のように鳴いて結合部から飛沫をあげて喜ぶのだから本当にネコなのかと疑いたくなった。
「なあ、これどうするんだ? お前のせいで汚れたんだ」
「ふあぁっ♡ ごめ、ごめんなしゃいぃ♡ 気持ちよすぎてぇ、おもらししちゃったぁ♡」
些か乱暴に突き回しても悦びの声を上げながら潮を撒き散らしているのだから本当に異常としか思えない。自分がこうしてしまった責任はあるものの比留間に元々その素質があったためにこの時期になると本当に手がつけられなくなる。
「……っひ! うっ、ううう……っ♡」
特に何かした訳でもないのにぎゅうと締めつけが強まる。その理由を逡巡してすぐに悟る。
揺さぶられるうちにシーツに乳頭が刺激されて普段は隠れている乳首が勃起して強い刺激を与えられたのだろう。
日頃優しく扱っているものの少しの刺激で身体を震わせるだけに、今も不規則に痙攣をしている。
「オナホのくせに勝手にイったのか。大して動いてないよな?」
「はっ、う……う、ごめんなさい……♡ オナホのくせにおっぱい気持ちよくてぇ……♡」
「ふーん、乳首気持ちいいんだ、でも別に触ってやらなくていいよな、お前はオナホなんだから」
「くぅん……♡」
中々に酷い言葉を思ったままにぶつけてしまったが当人的にはクリティカルヒットだったようで、微かに喉が鳴っている。
「尚しゃ、尚しゃんにぃ……♡ すっきり、してもらうのがぁ♡ 幸せだから……♡」
指を舐めさせているだけでは声を上げてしまうので上半身をシーツに押さえつけるように体重をかけて奥まで貫くとくぐもった声を出してびくびくと肩が跳ねる。またイったのだろう。本当に淫乱で、どうしようもない番いだ。しかしそんな比留間に興奮する自分も、既に手遅れなのだろう。
ねちっこく奥の壁を穿つ。すっかり感じきっているようで子宮口が手前まで下りてきていて中が狭く感じる。押し上げるように腰を突き入れてぐりぐりと捏ね回すとまたびゅっと飛沫が断続的に迸る。脱水症状になるのではないかというほどに全身をずぶ濡れにさせられながら腹を空かせているそこにたっぷりと餌を与えてやると一際激しく総身を震わせた。
くたっと比留間は脚が萎えさせてシーツに沈み込んだが、まだ食い足りないと肉筒は食らいついてくる。こんなものではこのメスネコは満足しない。一度陰茎を引き抜いて身体を仰向けに反転させる。
「ほら、まだ欲しいんだろ。きちんとねだれ」
「ふあぁ……っ♡ オナホっ♡ もっと使ってくだしゃいっ♡」
またぐるると喉を鳴らして喜んで自分の両脚を持ち上げて精液と己が吐き出した蜜でどろどろになった陰部を曝す。そこは一度獅子崎のを受け入れて真っ赤に充血した粘膜がひくひくと震えていた。見られているだけでも感じるのかまたどろりと白濁を零した。
「本当に、淫乱」
「ひあぁあっ♡」
ずんと奥の奥まで挿入すると悲鳴のような嬌声をあげる。その声に自分でも驚いたのか比留間が口許へ指をやりかけたのを見て、咄嗟に自分の指を噛ませないようにと伸ばした手でそのまま比留間の口許を覆うと眼許まで覆い隠してしまった。
うっ、と比留間は息を詰める。しかしされるがままで薄い酸素を必死に求めて浅い呼吸を繰り返していた。
オスの頃は時々こんなことをしていたが、メスになってからは初めてのことだ。それでもこの状況は堪らないらしく苦しいほどの圧迫感から逃れるように荒く腰を打ちつける。
涙と涎で手をぐちゃぐちゃに汚されたって、それさえも愛おしく感じてしまうのだから。
もう、手遅れなのだろう。
「うぅ、ぐっ……ぅ、うぐぅ~~っ!」
じたばたと手足をばたつかせて、必死に逃れようと暴れながら、血流が止まってしまいそうなほど全身を強ばらせた。そのまま脱力していきひくんひくんと身体を震わせる。軽く意識を飛ばしているのだろう。
追い打ちをかけるように弾力のある奥の口に亀頭を擦り付けて先ほど出した精液と先走りを塗り込むように動く。加えて腹の上から子宮を腹部で押さえつけてやるとどこを見ているのか焦点の定まらない瞳からぼろぼろと大粒の涙を零した。
早く飲ませてくれと云わんばかりの粘膜の貪りを受けて奥まで貫いたまま熱を浴びせかけると意識を取り戻してくうん、と甘えた声を上げてゆったりと獅子崎のオスを締め付けながらそれを受け入れた。
しばらくそのまま、一滴も零さないよう馴染ませるように奥の壁を嬲ってやるとぎゅうとまた痛いほどに食い締められた。
「あ……、あー……」
蕩けていた比留間の声が少しずつ芯を取り戻してくる。自分の脚を持ち上げていた手でそのまま顔を覆う。
「……最悪」
欲を満たされたことにより冷静な思考を取り戻したらしい比留間はそのまま乱暴に脚を放り出した。
「ごめん……尚さん」
「いいよ、もう慣れた」
気にするなと指先に、額に。耳へ唇を触れさせて毛繕いをするように舐め上げると敏感になりすぎた身体にはまだ刺激が強かったのかきゅうぅと締め上げられて、また熱が灯る。
「いいから……ねえ、もう一回。うんと、優しくするから」
そのままよく聞こえる獣耳に囁くと逃げるように耳が伏せられた。
「……っ、あ、も……っ、……どーぞ、お手柔らかに……」
拗ねたような声の響きだったが、許しを得たところで今度こそ優しく、甘やかしてやるためにそっと唇を触れ合わせた。
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