月に一度、ミケを家に呼ぶ日。
運悪く、僕は風邪をひいてしまった。
ミケに移してはいけないと思い連絡を入れると「ばーか、そんな時こそ俺を呼ぶべきだろ?」と心配をしてくれた。
「それに、ヒトの風邪は移らねえから」と言われて安心して予定通り寒気に震えながらミケの到着を待っていた。
呼び鈴の音がして時計を見ると約束より幾分か早い時間だった。布団から出て出迎えにいく。
「大丈夫か?」
開口一番に身を案じる言葉を掛けてもらえて、自分で思うよりも心許ない心地だったことに気付いた。普段から引き籠もって執筆活動に明け暮れているだけに滅多に体調を崩すことなどない。
数日前に季節感がわからず薄着で出掛けてしまったことが悪かったのだろう。
「うん、大丈夫だよ」
「ほら、病人はさっさと布団に戻った戻った」
かさりと硬質な音が聞こえて視線を落とすと買い物袋が眼に入った。スポーツ飲料など置いていないだけに有難い差し入れだ。
「ごめん、あとで払うから」
「あー、もういーから!」
ぐいっと腰に腕を回されて、そのまま抱き抱えられる。いつかミケにやってあげたいと思っていたことをまさかやられるとは思わなくて息が詰まって咳き込んだ。
「身体冷えだんだろ、まったく」
軽々と寝室まで運ばれてベッドに寝かされる。しっかりと肩まで布団を掛けられた。
「台所借りるぜ」
そう云ってミケは寝室の扉を閉めた。姿は見えないが何かしらをしている音は聞こえる。誰かがいる。家族とすら上手く関係を築けなくて一人暮らしをしているくらいなのに、ミケがいると安心する、なんて。
「……ん」
「あ、起こしたか?」
ひんやりとした感触にいつの間にか閉ざしていた視界を開くとミケが頭を撫でてくれていたようだった。
「お粥作ったから、少しでも腹に入れとけ」
「ありがとう」
ベッドから立ち上がって台所へ向かい、すぐに鍋を持って戻ってくる。
「はい、あーん」
「いっ、いいよ……自分で……」
「病人なんだから大人しく甘やかされておけって」
ふっとやわらかく微笑んで匙を口許に差し出される。人生でこんな経験あっただろうか。幼児の頃まで遡ればあったかもしれないが、ほとんど記憶にない。
恐る恐る口を開ける。ぱくりと匙を咥えてお粥を咀嚼する。よく煮込まれていてするりと飲み込むことができた。
「美味しい……」
「そっか、よかった」
ぴくりと頭部の獣耳が嬉しそうに揺れる。二口目からはそれほど緊張せず食べることができて、さらりとお代わりまでしてしまった。
「あー……そういや」
「どうしたの?」
スポーツ飲料の蓋を開けて差し出してくれたミケが不意に気まずそうな顔をして、言葉を切った。
「うーん? んー、まあ、丁度いいっちゃいいのか……?」
「??」
独り言つて解決したらしく「なんでもない」と鍋にお椀を重ねて片付けにいってしまった。
まあ問題がないのならそれに越したことはないとペットボトルを傾けて中身を飲む。そんなに汗をかいていないと思っていたが水分が身体に染み渡る感覚が心地いい。
「……なあ、」
「うん……?」
声をかけられて視線を向けるとミケは扉から顔だけを覗かせている。尻尾がゆらりと揺れて、なんだか落ち着かない様子だ。
「……今さ、あれじゃん?」
「あれって……?」
「……予約する時見なかった?」
「ごめん、何かあったっけ?」
「…………」
ふーと息を吐いて、ミケは扉を開けた。が、僕はミケの全身を見た瞬間頭がかっと熱くなってしまう。
「わ、やば、血! ティッシュ!」
気まずそうな顔から表情が一転して慌てた様子で枕元からティッシュを取って鼻を押さえられる。
「だ、大丈夫か?」
「う、うう……」
熱で弱っている僕にはあまりにも刺激的すぎた。看護師の制服に身を包んだミケの姿は。
「……ふーん、こういうの嫌いじゃないんだな」
そっとベッドに押し倒される。ミケは僕の手を取って、ボタンが止められずに曝されている胸元へ触れさせた。
「本当は飼い主様には白衣着てもらうんだけど、病人だし、な?」
「……!」
それはそれでいいかもしれないと一瞬思ったが、そこまで思考の余裕はなかった。そのまま腹部、股間、太ももへと導かれるままに辿っていくといつもと違うつるつるとした感触がした。
「……熱出た時、どうすればすぐ下がるか知ってる?」
知らない。知らないが、ミケの言動でわかってしまう。
相変わらずミケが僕の手を操っている。爪を立てさせて、一方向に引っ張られるとよく知ったミケの肌の感触があった。
「ちゃーんと看病、してやるから」
頭がぼんやりとしてくる。むしろ熱が上がってしまいそうだと思いながら、僕はミケに手厚く看病されたのだった。
以下女装絵注意。

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