「さて、なぜ呼び出されたのかおわかりでしょうか」
開口一番にそう問いかけられ比留間ミケは引きつりながらも笑みを浮かべて首を傾げた。
「さあ……生憎思い当たる節がありすぎるんで」
椅子に深く腰掛けた設楽うさぎの前に立ち、相変わらずこの部屋は居心地が悪いと密かに嘆息する。この人に何の警戒心も抱かずにいられているのは牙狼晴臣くらいだろう。
「ふふ。まああちらこちらでお痛をしている自覚があったのは褒めてあげましょう。しかし残念ながらそれの中のどれでもありませんがね」
来るようにと手招きされれば従わない訳にはいかない。あんな悪趣味でも一応は最上位ペットだ。
その招く手が止まったと同時に腕を惹かれバランスを崩して倒れかけるが、意地でも設楽の胸に飛び込むのは避けたくて椅子の肘置きに手をついて回避する。
「さすがネコ……ですが、そんなあなたがどうしてまたヒトなんて遠い存在に好意を寄せているのでしょうねぇ?」
「……っ! 何言ってんだよ、派遣中のことなんて所詮仮初めだろ」
「私の目が誤摩化せるとお思いで? 随分と甘く見られたものですね、私も」
ぎりっと掴まれたままの手首に力が込められて思わず顔を顰める。
「どこか調子でも悪いのでしょう。早めにわかった方がいいでしょうし私が調べて差し上げます」
「っ、何だよ、別におかしくもなければヒトなんかを好きになった覚えもねぇよ」
片手は掴まれて、もう片方も自分の身体を支える為に使っている為身動きができない。それをいいことに設楽の手は腰を撫でたかと思うとゆっくりと尻尾の付け根へと移動していきぞわりと肌が泡立つ。
「ネコはここを触られるのがお好きですよねぇ……これだけでそんな表情になってしまうのですか、はしたない」
「っ……だったらもう触んなよ……」
ずっと触られ続けていると妙な気持ちになってきてしまう。でも設楽相手に食指は動かない。早い所この妙な検査とやらが終わってくれないものか。終わったら愛猫でも掴まえてこの熱を発散させようと思った。
「調べていると云っているでしょう? まあ毛並みも申し分ない立派な尻尾ですね」
ようやく尻尾から手を離されてほっとしたのも束の間、今度は上着に手をかけられて背を反らして距離を取ろうと図る。
「大人しくなさい」
そう云いながらも片手にも関わらず器用にボタンをすべて外していき、無防備に素肌をさらすことになる。
「遊び回っているようですがそれにしては綺麗な色ですねぇ……晴臣といい勝負です」
「へぇ……それはどうも」
特に嬉しくも何ともなかったが一応答えておく。
「感度の方はどうでしょうかね」
「っ、そんなの調べる必要ないんじゃ……?」
ふにふにと周りを揉まれて思わず声を漏らしてしまう。
ずっと柔らかく触れられるだけで核心に触れてもらえずもどかしくて腰が落ち着かない心地に戸惑う。
「おやおや……ここに触れられるのが嬉しいようですね。尻尾が先ほどから動いていますよ」
「は……っ、ちがっそんな訳じゃ……ひあっ」
急に先を摘まれて痛みにも似た鋭い快感が走る。
「おや違うのですか?」
そういうと再び周りを柔らかく撫でるもどかしい刺激に戻り先ほど中途半端に触れられた先がじんじんと痺れているようで気になって仕方がない。
「先ほどから震えているようですがいかがなさいました?」
云いながら根元をまた悪戯に指先が先端を掠める。些細な刺激のはずなのにやたら重く響き呼吸が乱れるのを隠しきれない。
「ご自分で見てご覧なさい。こんなに赤く腫らして……まるでメスのようですね」
「っく……ちが、う……」
また触ってほしい。反抗心よりそんな感情の方が強くなってきて声を張ることもできず弱々しく答える。
「そうですか? ふふ、こちらもまったく触っていないのに膨らんできていますね。健気で愛らしい」
「あ、あぁっ……や、め……っ!」
反対側の突起を急に触られてまるで自分の声ではないような高い声が迸り、咄嗟に唇を噛んだがもう一度出た声は戻らない。
「ほら。メスのようでしょう? そんな声で鳴いて……早く素直になれば楽になりますよ」
──素直に? 楽に?
それはどういうことだろう。そもそも今どうして設楽とこういうことになっているのかうまく繋がらない。
ぼうっと設楽を見下ろしていると不意に手が離れた。
意図せず視線を落とすと肌蹴られた自分の胸元が見えた。そこはいつもより色が濃くなって尖った乳首があった。こんなの自分の見慣れたものではない。そうではないと思いつつも刺激を求めてじんじんと痺れが止まらない。
「こら。誰が自分で触っていいと許しましたか。ふふ……本当にあなたはメスのようですね。はしたない、そんなに疼きますか? 私の前で自分で慰めたくなるくらいに?」
設楽の言葉にぞくぞくと被虐心を煽られる。少しだけ、触りたいと思っただけで実際には指先が震えるくらいの反応しか見せていなかったはずだが、それを見抜かれたことに、そして自分の意思を裏切る身体に羞恥を覚えた。
「見ているだけで尖ってきますね。ご自分でもわかるでしょう。こんなに大きくして……」
ぶるっと腰が震える。衣服の下で一切触れてない自身が先走りで濡れているのがわかる。こんな少し胸を触られただけでどうして……そう思いながらも増してくる快感には逆らえず、吐く息が湿る。
「だめっ……もう、我慢できない……」
「でしょうね」
さらりと返されて耳がびくっと動いてしまう。
「それで、どうしたいんです。見てて差し上げればよろしいですか? あなたが一人悦がってるところでも」
「あっ……ちが、触って……触ってほしい……っ」
「私にですか? それとも……諏訪中将にでしょうか」
「っ……中将は、関係ない……ぁっああぁ!?」
「そんな表情で云われても説得力がありませんよ。まあ、あなたにしては上出来でしょうから、たくさん可愛がって差し上げますよ」
「やあっ、あっああ、いっ……あぁ……」
先をくりくりと指先で捏ねられるだけで堪らなく気持ち良くて声が抑えきれない。甘ったるい声、こんな声が出せるなんて知らなかった。
「ふふふ。そんなはしたない声を上げて……あなたにこんなに素質があるとは思いませんでしたよ。むしろこんな身体でよく今まで満足出来ていましたねぇ」
きゅっと先を摘ままれるとびりっと衝撃が走った。よく知った感覚、信じられないが胸だけの刺激でもう既に果ててしまいそうだった。
「あっ、は、ああっあっだめ、もう無理っ……」
「おやおや、何がです。まだまだ足りないでしょう。もっと触って差し上げます」
「あっ……あっ、やめ、くっ……ううぅっ……!」
頭が真っ白になる。勢いなくだらだらと吐き出される精液の感覚がやけに生々しく感じられる。自分の身体を支え切れす崩れ落ちそうになるが、泣けなしの理性で止まって脚を震わせながら耐える。
「おや……ほう、これだけで出してしまったのですか? 堪え性がないというのか……あなた本当にオスなのでしょうかねぇ」
屈辱的なことを言われているとわかっている。だが、自分自身も驚いていて返す言葉など思いつくはずもなかった。
「ひっ、やだっまだ触んな……っ!」
「躾ですから私が決めますよ。ほら、力を入れていないと私に抱きしめられてしまいますよ?」
「っ……んっ、んんぅ……」
あまり力の入らない腕を騙して身体を起こす。しかし気をつけていてもすぐにへたってしまう。
「おや……何でしょう、これは」
指先できゅっと強めに摘ままれてびくっと腰が逃げる。周りを撫でたり押したり、乳首を揉まれると妙に擽ったいような胸が苦しい感覚に戸惑う。
「ああ……っ、ふ、やっ、あ、あっ、ああっ!」
「おや……これはまたすごいですねぇ」
指先に力が込められるとびゅっと白っぽい液体が飛び出してくる。それは触れられていない方も同じでじわじわと雫を溢れさせていた。
「さすがに初めて見ましたよ。まさかこんなことがあるなんて。ふふ、もうオスもネコもやめてメス牛にでもなったらいかがです?」
「いやっ、やだ……! こんなの、知らないっ」
面白がるように触れられる度体液は溢れ出して設楽の手袋に包まれた指先をどろどろに濡らす。次第に吐き出す感覚が心地よくなってきてもう何がおかしくておかしくないのかわからなくなってきた。
「いつまでも出ますねぇ……ああ、あなたのせいでこんなに汚れてしまいましたよ」
眼の前に翳された指先に夢中で舌を絡ませる。時折指先が舌を擽りその感覚にも身体が震えて今度は絞られてもいないのに乳頭から吹き出していた。
「どうしようもないですね……これではきりがない」
口から指を抜かれると名残惜しそうに舌がその指を追う。もっと気持ち良くなりたい。もっと溺れてしまいたい。
ごくりと唾を飲み込み膝を曲げて床にへたり込むように座る。
「……おや、奉仕したいのですか。本当にあなたはメスですね。いいでしょう、許可してあげます」
許しの言葉を聞いて一心不乱に股間に顔を埋める。既に兆していたオスの匂いに眩暈を感じながら舌を使ってそれを更に大きく育てる。
もう逃げることはないと判断されたのかしばらく押さえつけられていた手首は解放されていた。濡れて気持ち悪い下も脱いで疼いて堪らない奥に指を沈める。奥まで指よりも確かなもので埋め尽くされたい。
「ああ……普段のあなたを知るヒトが見たらどう思うでしょうね。どこもかしこも自分の体液で汚して……」
「んっ……奥、もっと奥までほしい……っ」
ぐずぐずになった場所から指を動かす度に水っぽい音が鳴る。その様子を満足げに眺めて口許を歪める。
「ほら、あなたにはこれがあるでしょう。はしたなくねだる前にご自分で頑張りなさい」
「ひゃあっ、それっだめ、は、あぁっ」
弱点の尻尾を急に掴まれて悲鳴に近い声が喉を震わせる。それでも疼く場所に宛てがわれると物足りなさに感じていたそこは嬉しそうに口を開きあっさりと尻尾を咥え込んでいく。
「あ、う、っうあぁ……っ!あぁっ!」
内側から与えられる刺激も尻尾に加えられる圧も同時に襲いかかってきて容量を超える快感に身体が恐怖を感じて暴れ回るが設楽に腰を掴まれて更に奥へ尻尾を押し込まれてもう声すら出なかった。
「ご自分の身体の具合はいかがですか? と、聞くまでもないでしょうか。とても美味しそうに咥え込んで離しませんねぇ……」
楽しそうに酷薄な笑みを浮かべる設楽。既に比留間には誰に何をされているのかどうでもよくなっていた。罵倒される言葉すら快感に変わってしまい設楽への奉仕がままならなくなる。
「おやおや……ご自分が満足出来たら相手はどうでもいいのですか? これはお仕置きが必要ですねぇ……」
「そろそろお見えになる頃ですが」という設楽の言葉に微かに耳が反応する。誰かがここに来る。それはわかるが問題は誰なのか。まあ誰が来ても別にいいと思う。それよりこの状態が終わってしまう事の方が切なくて自分の体内に埋まった尻尾を動かしてしまう。
「ふふ……あの方もきっと可愛がってくださいますよ。今のあなたには躾が必要ですからね」
どういう意味だろうか。働かない頭で反芻してみても答えは出ず、遠くから聞こえる足音に一気に思考が鮮明になった。
「ま、さか……」
「ふふふ……あはははは! さすが、私たちほどではありませんが耳がいいですね。そうですよ、あなたの大好きなヒトがこれからここに来ます」
「やっ、やめてくれ……頼むっ、それだけは……」
「どうしてです? こんな状態では飼い主様を満足させる事などできないでしょう。中将のお力を借りた方がいいかと。これは私の判断です」
「やだっ……んっ、んん!」
「盛りのついたネコは喧しいですねぇ」
口の中に指を入れられて舌を摘まれるとがくっと力が抜けた。そのまま咥内を掻き回されると心地よさにまた思考が霞んでいく。
どうしたって自分はこんな存在なんだ。あのヒトに似合う存在になりたくて足掻いても結局快楽に勝てない。
「どうぞ、開いていますから」
扉を叩く音。それから息遣い。それらが鮮明に聞こえて身体が震える。扉の向こうにあのヒトがいる。自分のこんな姿を見てどう思うだろうか。
「……先客があるとは聞いていなかったが出直した方がいいか?」
「いいえ。比留間のことでお話がありましたので」
「……そうか」
設楽を視界に入れようとすると同時に比留間のことも視界に入る。それでも見ないように気を遣われていることがわかりまた胸が疼く。
「それで、その話というのはなんだろうか」
「いえね、見てください。飼い主様へのご奉仕の指導をしていたのですがご覧の通り自分が楽しむ事に気を取られすぎているようなので、中将はどのような御稽古をしていらっしゃるのかと思いまして」
「いや……特には。そもそもそんな苦情も出ていなかったと思うが?」
元々不仲な事もあり設楽を信用していないのもあるのだろうが、あくまで比留間を信じて話をしてくれる諏訪にまた胸が痛む。
「……では、この事を中将はご存知でしたか?」
言葉と同時に脱力していた身体を起こされて諏訪に自分が吐き出した恥ずかしい粗相を晒す状態になった。
「やっ、もう触らな……っん、んんんっ」
先ほどと違い今回は両方同時に刺激されてまたあられもない声を出してしまいそうなのを指を噛んで堪える。
すぐに胸からくちゃくちゃと粘着質な音が鳴り出す。それと同時にまた触られてもいない下半身が完全に立ち上がりもうどこを触られていてどこがいきそうなのか判断出来なくなる。
「ほら、あなたの恥ずかしいものを中将にかけて差し上げなさい。マーキングですよ」
諏訪には聞こえない小声で耳元で話される刺激にも過敏に身体が震える。そんな事ができる訳がない。自分が汚してしまうなどあってはならない。そう思っても絶妙な力加減で乳首とその周辺を揉まれているとまた内側が疼いて張ってくる感覚に堪えきれず気がついた時には両方から勢いよく水っぽい体液が迸り諏訪の靴を濡らしていた。
「んっ、ちゅ……じょ、ごめ、なさっ、やっ、も……無理っ、ふぁあっ、あっいってる、いってるのに……っ」
こんなにだらしなく上からも下からも体液を零している自分の姿を諏訪はどう思っているのだろうか。呆れられただろうか。
「ふふ……中将、これは躾ですから。駄目なペットには罰が必要でしょう?」
「いや……」
「ほら、比留間。あなたが中将のお召し物を汚したのです。綺麗にして差し上げなさい」
胸から手を離されるとがくっと身体が前に倒れる。見てみると確かに靴が自分で吐き出した恥ずかしいもので汚れていた躊躇いもなく舌を伸ばしてそれらを舐め取る。
「比留間……! そんな事しなくていい、やめなさい」
「ふっ……俺が汚してしまったから、綺麗にしないと……」
「私は怒っていないよ。大丈夫、だから顔を上げなさい」
優しい声と指先が耳を撫でてきゅっと胸が竦む。こんなみっともない姿を晒してもそれでも優しい諏訪。顔を上げようとすると背後で尻尾を引き抜かれて代わりに熱い肉の塊を押し付けられる感覚に息が詰まる。
「ああぁぁっ、やっ、だめっ」
ゆっくりと中を満たされる感覚に背中がしなる。ずっと求めていた体温、感触に視界が霞んでくる。これは涙だろうか。
思わず眼の前にある諏訪の脚に縋り付いてしまう。
「中将、あなた涼しい顔をしていらっしゃいますがオス臭いんですよ」
「っ……」
びくっと諏訪の身体の震えが伝わってくる。こんな、自分の姿で興奮してくれたというのだろうか。
「や、やめないか比留間……」
辿々しく指を動かして前を寛げると先端が少し濡れた状態の性器が勢いよく飛び出してきてごくりと喉が鳴る。
「くっ、中将のものを見て興奮しているようですよ……そんなに食いつかれたら動けないのですが」
「ふ、う、ちゅ、んん……んっ」
先走りを舐める。これがこのヒトの味。もっと出してほしくてゆっくり舌を這わせる。質量を増していくそれが堪らなく愛おしくて一心不乱に舌で舐めて吸って。口の中でぎゅっと締め付ける。まるで中に迎え入れている時のように。
「んん、ちゅ、うじょ……気持ちいい、ですか? 俺の口の中……」
口の中に溜まった唾液と諏訪の体液を飲み込んで問いかける。またたびより酔ってしまいそうな味に酩酊状態に陥りそうになる。
「あ、ああ……上手だよ、比留間。躾なんて必要ないくらいだ」
「ふっ……嬉しい、です。もっと俺の口で気持ちよくなってください……」
頭を撫でられると本当に嬉しくて、真の飼い主である瑞清とはまた違う幸福感で満たされる。相変わらず設楽に中を貫かれて身体に力が入りづらかったが口を開けて喉の奥まで銜え込む。ぞくぞく震える快感を堪えながら喉を使って締めたり緩めたり強弱をつけて愛撫する。しているこちらも感じてしまうから滅多にやらないがもう二度とこんな機会はないと思うとせずにはいられなかった。
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