『あーんしている』『なおみけ』を描きor書きましょう。
#kawaiiCP
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先に定時で上がって、残業するという尚さんを近くのカフェで待っていた。 私も残ってお手伝いすると云ったけど、ここのところ手伝わせすぎていて申し訳ないからとやんわりと断られて気落ちしてしまった。でも「ご褒美に夕食ご馳走するから待ってて」と空かさず言葉を重ねられて私の気持ちはあっさりと浮上した。本当にお手軽な女でよかったと思う。 ミルクたっぷりのカフェラテをちまちま飲みながら適当にニュースサイトを斜め読みしているとわりと時間は直ぐに進む。けど、早く会いたい。その気持ちを抑える助けにはならなくて店員さんの「いらっしゃいませ」が聞こえる度に私は尚さんの姿を探してしまう。 不意にスマホの通知がくる。タップすると尚さんからで〖今どこ?〗とその下に尚さんの好きなくまのキャラクターがきょろきょろしているスタンプを見ただけで笑みを抑えることができない。 「お疲れさまです、会社の近くのカフェです、と」 無駄に早くできるフリック入力を駆使して即座に返信を送る。くまがハートを飛ばしているスタンプも忘れてはならない。 一秒でも時間を無駄にしたくなくて残っていたカフェラテを飲み干して返却口にカップを置いて店を出ると、ちょうどこちらに向かってきている尚さんの姿が見えた。 「尚さん!」 小走りで駆け寄る。うっかり抱きついてしまいそうになるのを寸でのところで堪えた。 「待たせてごめんね、じゃあ行こうか」 「はい!」 課長の尚さんは社内外問わずよく飲みに行ったりするのでいろいろな店を知っている。どこに行っても美味しいものが食べられるのはもちろん嬉しいけど、何よりも尚さんと一緒というだけでこの上なく楽しい気持ちになる。 「ふふ、ご機嫌だね」 「もちろんです!」 尚さんが笑ってくれると私も嬉しい。ますますご機嫌になって足取りも軽く一緒にお店を目指した。 尚さんが連れてきてくれた店はイタリアンレストランだった。 生パスタに窯焼きのピザとワインに合いそうなおつまみにデザートも種類が豊富だ。 「……迷いますね」 「どれと迷ってるの?」 「パスタかピザか……」 「そこからなの」 ぷっと尚さんが吹き出した。前にもメニューで悩んで尚さんに笑われたことがあったような気がする。 「じゃあカルボナーラとマルゲリータにして半分こする?」 「そうします!」 尚さんは私が好きなものを把握しているので決めてもらえるのは有難いし、外れることもないので安心して任せることができる。 前菜のサラダ、パンとスープがすぐに運ばれてきて美味しそうな匂いに空腹感がやってくる。 「いただきます」 まずはサラダからいこうと一口食べてみる。新鮮なレタスに塩水で辛みを抜いてある玉ねぎ。かかっているドレッシングはシンプルなもので野菜の味を引き立てている。 「美味しいですね!」 「よかった、ミケの好みかなと思ってたから」 いつも尚さんが飲みに行くと寂しくなってしまうけど、こうして私のことを考えていてくれていることがわかると喜びと少し照れを感じてしまう。 そうしているうちにパスタとカルボナーラも揃い、パスタは尚さんの方にあるので取り皿を渡そうかと手を伸ばすと目線で待って、と云われた気がした。 見ていると尚さんは器用にフォークにパスタを絡めて、それをそのまま私の方に差し出した。 「はい、あーん」 「うっ、は、恥ずかしくないですか……?」 「そんなことないよ、ほら、冷めちゃう」 「あ、あー」 そう云われると早く食べなくてはと焦ってしまい、眼を瞑ってぱくりとフォークごと咥えてしまう。 「お、美味しい……!」 チーズの味が濃厚でブラックペッパーもいい引き立て役になっている王道のカルボナーラ、つまり私が好きな味だ。 「ふふ、よかった」 またフォークを操って一口分のパスタを取っては同じように差し出される。 「あ、あの……取り皿は」 「餌付けしてるみたいで可愛いからこのまま」 「う、うう……」 邪気のない笑顔でそう云われては逆らうことなんてできない。 結局羞恥心を感じつつも雛鳥のように尚さんにパスタを運んで貰い続けたのだった。