『傘に隠れてキスをする』『なおみけ』を描きor書きましょう。
#kawaiiCP
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数時間前までは雲ひとつない綺麗な秋晴れだった。天気予報の降水確率もゼロ。 なのにぽつり、と雫が頬を掠めたかと思うと次々にぱちぱちと音を立ててコンクリートが黒く染まっていった。 「うわあ……もう帰るだけなのに……」 「そこのコンビニで傘買って帰ろう?」 インドア派の私が脳内でだから今日は尚さんとだらだらDVDでも見て過ごせばよかったのに、とごねるのを押し退けるように尚さんが手を引いてくれて、楽しかったから出掛けてよかったのだと急いでコンビニに駆け込んだ。 突然の雨に同じように傘を求めるお客さんが列を作っていて、「雑誌でも見てたら?」と尚さんは傘を持ってその列に加わった。 本当になんて優しい人なのだろう。混雑していなければ一緒に並んで他愛のない話でもしていたいけど、邪魔になるのはわかっているのでお言葉に甘えて雑誌コーナーに向かう。適当に表紙を眺めて気になったのは一ヶ月分のお弁当レシピが載っているらしい本くらいだった。 いつも尚さんが自分の分のついでにと私の分も作ってくれている。それに甘えているのも申し訳ないと思うもののお弁当の作り方がよくわからなくて実践に移せていなかったのであとでネットでポチっておかなくては。 「お待たせ、帰ろうか」 「ありがとうございます」 一緒にコンビニを出て尚さんはさっそく買った傘を開く。結構大きめな傘だった。これならくっついて入れば濡れることはないと思う。 「ほら、もっとこっち来て? あ、腕組む感じでいいかも」 「えっ、ええ……!?」 いつもよりも傍を歩いているつもりなのに、尚さんは傘を持っていない手で腰を引き寄せる。 ちらりと尚さんを見ると悪戯を仕掛ける子供のように笑っていて、明らかに私の反応を見て揶揄っていることがわかった。 「う……意地悪……」 「好きでしょ、虐められるの」 表情が急に艶を纏って、冷淡な感じがしながらも熱の篭った目線を送られると今いる場所を忘れてはしたなくねだってしまいそうになる。 「すき……」 何とかそれだけを返すと尚さんの綺麗な顔が近づいてきて、唇に柔らかな感触が触れる。 「っ……なななおさん!?」 「ふふ、可愛いから我慢できなくなっちゃった」 「やっ、だ、誰かに見られたら……!」 慌ててきょろきょろと周りを見回したけど特に視線は向けられていなかった。むしろ私が一番不審者だ。 「……帰ったらもっと可愛がってもいい?」 「……お、お手柔らかに……」 雨が降ると傘で視界が閉ざされるせいか、いつも主に身体に向けて送られる視線もほとんど感じない。 雨の中の外出も案外悪くないものだと思いながら、そっと尚さんの腕に自分の腕を絡ませた。